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ファクタリングの歴史

公開日:2020.05.29

最終更新日:2022.03.28

ファクタリングは現在、世界中で活発におこなわれている金融サービスですが、その歴史はとても古いものがあります。今回はファクタリングがどのように誕生し、現在に至っているのかについてその歴史を追っていきます。

イギリスで誕生したとされるファクタリング

実はファクタリング誕生については諸説あり、どの説が正しいのかはわかっていません。最も古くに発祥したと考えられている説では、紀元前1772年頃に古代メソポタミアと呼ばれる現在のシリアやクウェート、イラク周辺にいた交易者が自らのビジネスで取り入れたのがファクタリングの始まりとされています。その一方、イギリスで誕生したとされる次の2つの説もあります。

まず、14世紀以降に登場した「ファクター」と呼ばれる売掛債権を買い取る組織によって始まったとされる説です。当時のファクターは衣料品や繊維品の交易をおこなう者に現金を前貸ししていました。

もう一つの説は16世紀頃に支払い保証制度という形で誕生したとされる説になります。当時イギリスの植民地であったアメリカとの交易をおこなっていたイギリス商人は請求書を担保に支払い保証をしてもらう制度としてファクタリングを利用し始めたとされています。

その後も18世紀から19世紀にかけてイギリスからアメリカ移住者向けに輸出されていた毛織物の売掛債権を資金化するファクタリングという形でさかんに活用されています。特にイギリスの産業革命以降、信用力を保持する企業からファクタリングは多く利用されました。

20世紀以降アメリカで大発展を遂げたファクタリング

20世紀の初頭になるとファクタリングはアメリカで大きな発展を遂げ、現在のようなファクタリングサービスが登場することになります。この頃になるとイギリスのファクターは繊維産業の停滞と繊維製品の輸出鈍化に伴って勢いを失っていきます。そのファクターと入れ替わるように登場するのが、アメリカのファクタリングサービスです。

特に1940年代にはファクタリングへの大きな需要を感じ取ったアメリカの銀行によってファクタリングサービスが提供されるになります。この頃から今のように専門的な信用力調査と請求書などの売掛債権の買取りがおこなわれるようになりました。

さらに1970年代の銀行規制や金利上昇を追い風として、ファクタリングサービスは資金調達方法として広く活用されるようになっていきます。そして1990年代になると特定の業種に属する企業向けに小規模なファクタリングサービスが始まり、より専門性が高まっていくのです。

1970年頃から日本に登場したファクタリング

ファクタリングサービスが日本にも登場するのは1970年頃のことになります。その頃の日本国内では、手形取引や手形割引が主流となっており、ファクタリングへの注目度はあまり高いものではありませんでした。その理由としては、ファクタリングの仕組み自体が手形取引のようにわかりやすいものではなかったことや売掛債権を信用で買い取るという仕組み自体に対するイメージの悪さなどが要因となっていました。

ファクタリングはそれほどの支持を集めていませんでしたが、バブル経済が起こる1980年代終わり頃からは、主に中小企業や個人事業主によって資金調達手段としてファクタリングの利用が増加し始めます。その後、手形取引が減少し始めたことや1998年に債権譲渡に関する法律が整備されたのを機に風向きが大きく変わります。

手形取引のピークはバブル経済真っ只中の1990年の数値であるおよそ4,797兆円で、1991年のバブル崩壊以降は急減していきます。2017年度の手形取引高がおよそ374兆円ですので、ピーク時に比べると1割を切るに至っています。

手形取引が減少した要因として考えられるのが、取引コストと低い流動性です。手形取引コストとしては、手形発行の際に必要な手形印紙代や換金時の取引コストがあります。また、手形は裏書によって取引先への譲渡は可能ですが、額面金額を変更できないなど支払方法として使い勝手がよくありません。盗難や紛失のリスクが高いことも手形割引が減少した要因となりました。

一方、法整備については1998年10月に施行された「債権譲渡特例法」の登場により、債権譲渡登記制度が制定されました。この法整備をきっかけとして売掛債権の二重譲渡防止といったトラブル回避の法的な下支えが生まれ、債権譲渡取引が円滑におこなう土壌が整いました。

日本でのファクタリングの今

日本の現在のファクタリングは取引規模では本場のヨーロッパやアメリカには劣るものの、中小企業から個人事業主にいたるまで幅広く利用されています。ファクタリング業者の数も増加し、銀行系からノンバンク系、さらに独立系と様々な業者がサービスを提供しています。

また事業規模や資金力に応じて対象とする顧客層や限度額の上限・下限が異なっています。例えば、資金力のある銀行系の場合、億単位の買取りや国際ファクタリングに対応する会社もあります。反対に独立系のファクタリング業者の場合、取引限度額の下限が小さく、中には5万円という少額買取りに対応するところもあります。

従って、希望する買取金額や債権の種類などに応じて業者を選べるほど各社でサービスの種類も豊富に揃っているのが現状です。全般的にターゲットとなる顧客層が細分化され、それぞれの層に対する専門性や実績が高まっているのが見て取れ、利用しやすい環境が整っているといえそうです。

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